Tekla Structuresとは?
Tekla Structures(テクラ ストラクチャーズ)は、株式会社トリンブル・ソリューションズが提供する、鉄骨・RC・PC(プレキャストコンクリート)などの構造分野に特化した3次元BIMソフトウェアです。設計意図を表現する初期検討から、工場製作(ファブリケーション)に必要な詳細モデル、現場施工における施工図作成や干渉確認に至るまで、同一モデル内で一貫したデータを構築・運用できる環境を提供します。部材の接合部や配筋、仕口などを製作・施工が可能なLOD(詳細度)500レベルで正確に再現できる性能を備えており、大規模かつ複雑な構造プロジェクトにおいても処理性能を維持しながら、現場の手戻り防止や生産プロセスの効率化を支援します。
主な機能
Tekla Structuresは、構造モデルの構築から図面生成、部材製作向けの数値制御データ出力、チーム間での共同作業に至るまで、構造実務に必要な機能を網羅しています。確認された主要機能は以下の通りです。
高詳細度(LOD500)構造モデリング機能
- 複合材料に対応した高精度3Dモデリング
鉄骨、現場打ち鉄筋コンクリート(RC)、プレキャストコンクリート(PC)、木造など、多様な構造種別の部材を高詳細度で立体配置できます。設計段階の抽象的な骨組みにとどまらず、柱・梁の取り合い、ガセットプレート、ボルト、溶接部、鉄筋の干渉状態や曲げ形状までミリ単位の精度で忠実に表現することが可能です。これにより、設計変更時にも構造部材間の幾何学的整合性が自動的に保たれ、作図段階や施工現場での取り合い不整合を未然に防ぎます。 - 自動干渉チェックと納まり検証
配置した構造部材間、あるいは鉄筋同士の物理的な衝突をモデル上で自動検出します。従来の2次元施工図では見落としやすかった複雑な梁柱接合部内の配筋過密やボルト干渉を施工前に可視化し、現場での手戻りや工事中断のリスクを低減させます。 - 点群データのインポートおよび3次元可視化
3Dレーザースキャナーやドローン測量によって取得した現場の点群データをソフトウェア内に直接読み込み、設計モデルと重ね合わせて表示できます。改修工事における既存建物の実測形状や、新築現場における基礎アンカーボルトの打設位置を現況点群と比較検証することで、建入れ直しや建て逃げ計画の精度を向上させられます。
製作図・加工データ出力支援機能
- 鉄骨製作向けNC加工データ(DSTV等)のエクスポート
モデリングされた部材情報から、鉄骨加工工場の工作機械(孔あけ機、切断機など)を直接制御するためのDSTV形式などのNCデータを直接抽出・出力できます。CAD図面から工作機械への数値入力作業を介さずにデータを連携できるため、入力ミスを防止し、鉄骨ファブリケーターにおける加工工程の省人化を支援します。 - AI技術を活用した図面自動作成支援と図面クローニング
過去の作図パターンやテンプレート照合を行うAIクラウド製作図サービスや、類似部材の図面レイアウトを複製する図面クローニング機能を備えています。部材図、組立図、一般図などの出力時に、寸法線や記号の配置を自動調整・補完することで、施工図や製作図の作図作業にかかる工数を削減します。
クラウド連携・共同モデリング機能
- Tekla Model Sharingによる分散共同作業
クラウドを介して複数の拠点や異なる企業間で同一モデルをリアルタイムに共同編集できます。モデル全体を都度同期するのではなく、編集した差分データのみを高速に送受信する構造となっており、通信環境に制約がある現場事務所や海外拠点との間でも安定した分散モデリングを可能にします。 - Trimble Connect連携とマルチフォーマット入出力
統合コラボレーションプラットフォーム「Trimble Connect」と緊密に連携し、Webブラウザや現場端末から最新の3Dモデルや関連図面を閲覧・共有できます。また、国際標準規格であるIFCをはじめ、DWG、DXF、DGN、3D PDFなど数十種類のファイル形式のインポート・エクスポートに対応しており、意匠系・設備系のBIM/CADソフトウェアとの円滑なデータ相互運用を実現します。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
大規模・複雑な鉄骨構造物やインフラ建築を手がけるゼネコン・専門工事業者
- 部材数が膨大な大型案件での表示遅延やモデルクラッシュに直面している現場
Tekla Structuresは数万トン規模の鉄骨部材を扱うプロジェクトでも安定した処理性能を維持できるデータ管理構造を備えています。大容量の3Dモデルであっても軽快に回転・断面表示・干渉チェックを行えるため、大規模案件におけるモデリング遅延を抑え、施工検討を円滑に進められます。 - 設計図と工場加工・現場建方の間で手戻りや再作図ロスが多発している組織
LOD500レベルで生成されたモデルから、孔あけや切断用のNC加工データ(DSTV等)を直接出力できます。ファブリケーターでの中間入力や2次元図面からの読み替え作業を削減し、工場加工から現場での鉄骨建方に至るサプライチェーン全体の整合性を担保できます。
プレキャスト化やオフサイト施工を強力に推進したいエンジニアリング企業
- 現場作業の省人化に向けてPC部材の割付・接合部検討を高度化したい現場
プレキャストコンクリート部材の接合金物、インサート、埋設金物、鉄筋の納まりを製造限界まで詳細にモデル化できます。工場製作前の段階で物理的干渉や施工誤差の影響を検証できるため、現場での型枠組み立てや養生待ち期間を短縮するオフサイト施工の確実性を高められます。 - 複数拠点や協力会社間で分業モデリングを並行して推進したい設計・生産管理部門
Tekla Model Sharingを活用することで、差分データのみを同期しながら複数拠点で1つの構造モデルを構築できます。通信負荷を抑えつつ設計事務所、ファブリケーター、ゼネコン現場事務所がリアルタイムに情報を共有できるため、手戻りのない合意形成を短期間で実現できます。
向いていない企業・現場
意匠・構造・設備を単一の汎用ソフトウェアで一元完結させたい設計事務所
- 初期のボリューム検討から意匠レンダリング、確認申請図面までを包括処理したい場合
Tekla Structuresは構造分野の製作・施工精度に特化しているため、建物の意匠計画、空間デザインのビジュアライゼーション、設備配管設計(MEP)をすべて単体で網羅する用途には設計思想が合致しません。建物全体の意匠・設備を一体的にモデリングしたい場合は、意匠・設備モジュールを内包する統合BIMソフトウェアを検討する方が効率的です。
日本の建築確認申請に直結する一貫構造計算を単体ソフトで行いたい組織
- 国内基準の一貫構造計算モデルと図面作成を完全同期させたい場合
Tekla Structuresは日本の建築基準法に準拠した許容応力度等計算や保有水平耐力計算などの一貫構造計算機能を内部に保持していません。実務においては「SS7」や「BUILD.一貫」などの国内向け構造計算ソフトで構造設計・安全証明を行い、その結果を受けてTekla Structuresで詳細モデルを構築するという併用運用が必要となるため、構造計算から確認申請図書作成までを1つの操作系で完結させたい事業者には不向きです。
類似ツールとの比較
| ツール名 | 特徴 | 料金 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| Tekla Structures | 鉄骨・RC・PCの構造詳細モデリング(LOD500)に特化し、工作機械向けNCデータ出力や大容量処理に強みを持つ構造BIM | 要問い合わせ(サブスクリプション/個別見積もり) | 大規模構造物を扱うゼネコン、鉄骨ファブリケーター、PC加工会社、構造設計事務所 |
| Autodesk Revit | 意匠・構造・設備(MEP)を包括管理できる業界標準の統合BIM。建物全体のライフサイクル設計とクラウド共同作業に対応 | 要問い合わせ(サブスクリプション形式) | 意匠・設備・構造を横断して一括管理したい総合設計事務所、大手・中堅ゼネコン |
| Archicad | 直感的なUIと高速なレンダリング性能を誇り、初期意匠設計から実施設計図書の自動生成・BIM確認申請に強い意匠系BIM | 要問い合わせ(サブスクリプション/個別見積もり) | デザイン性や図面化のスピードを重視する組織設計事務所、アトリエ設計事務所、ゼネコン設計部 |
構造部材の加工精度や施工段階での実用性を最重視する場合は、Tekla Structuresが適しています。柱梁の接合部ディテール、鉄筋の1本ずつの曲げ加工情報、工作機械に直結するDSTVデータの生成など、LOD500レベルの「実際に作れるモデル」を構築する能力において、一般的な統合BIMソフトウェアとは明確に異なる専門性を備えています。また、鉄骨重量が数万トンに及ぶような超大規模案件でも破綻しない動作安定性も選択の基準となります。
一方で、企画・基本設計の段階から意匠・構造・設備を同一環境で統合調整し、建物全体の合意形成やライフサイクル管理を進めたい場合は、Autodesk Revitの採用が標準的な選択肢となります。また、デザイン提案やレンダリング表現、建築確認申請に向けた意匠図書の整合性確保を主眼とする設計事務所であれば、意匠モデリングに定評のあるArchicadが有力な候補となります。自社が担う主たる業務領域が「建物の全体意匠計画」なのか、「製作・施工に直結する構造エンジニアリング」なのかによってツールの選定を分ける必要があります。
料金・プラン
Tekla Structuresのライセンスは、用途や業務範囲に応じて選択可能なサブスクリプション形態で提供されています。提供されている構成(コンフィギュレーション)は以下の3種類です。
- Diamond
モデリング、図面作成、NCデータ出力を含むTekla Structuresのすべての専門機能を利用できる最上位構成です。構造詳細設計や鉄骨・PCの部材製作を直接手がける実務者に適しています。 - Graphite
構造モデルの作成および設計・施工図面の作成に対応した構成です。製作向けのNCデータ出力機能等は含まれず、主に構造設計や施工計画の作図実務を行う技術者向けです。 - Carbon
構築されたモデルや図面の閲覧、数量情報の抽出、注釈の記入、プロジェクト関係者間でのデータ確認を主目的とした構成です。現場管理者や積算担当者、社内レビュー担当者向けです。
各構成には、クラウドコラボレーションツール「Trimble Connect Business Premium」および分散共同作業機能「Tekla Model Sharing」の利用権限が含まれています。具体的な契約料金・導入費用については公式サイト上では公開されておらず、要問い合わせ(個別見積もり制)となっています。見積もりを依頼する際は、自社の各担当者が求める機能レベル(Diamond / Graphite / Carbon)ごとの必要シート数、契約単位(年間契約等)、導入支援やサポートサービスの有無などを確認することが重要です。
導入事例・実績
Tekla Structuresは、国内外の大規模建築・社会インフラ・プラント工事において多数の導入実績が公表されています。
鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社では、実施工BIM統合モデルの基軸プラットフォームとしてTekla Structuresを採用しています。同社が手がけた鉄骨重量77,000トン規模の超大型プロジェクトにおいて、建築・設備・インフラなどの全情報を含むIFC換算約2TBに及ぶ膨大なデータ環境下で運用されました。Tekla Structuresの処理性能により、モデルの表示遅延や動作停止を引き起こすことなく、スムーズかつスピーディーな操作・運用を実現し、超大規模現場における実施工BIMの基盤として機能した実績が報告されています。
Aibel社(ノルウェー)
石油・ガス・再生可能エネルギー関連の海洋プラットフォーム建設を手がけるAibel社は、北海におけるヨハン・スベルドラップ油田プロジェクト(第2期プラットフォーム上甲板:重量約25,000トン、構造図作成7,000枚以上)においてTekla StructuresおよびTekla Model Sharingを活用しました。分散した複数拠点のエンジニアチームがクラウドを介してリアルタイムに同一モデルを編集・共有し、部材製作工数および品質において「最大95%の効率化」を達成したことが公表されています。
ハードウェア推奨環境とワークステーション選定要件
Tekla Structuresは、高詳細度な部材形状や大容量の属性データを高密度に処理するため、一般的な事務用PCではなく、要件を満たした高性能ワークステーションの選定が推奨されています。開発元が公表している動作環境基準は以下の通りです。
| 構成コンポーネント | 標準動作要件 | 最高パフォーマンス重視要件 |
|---|---|---|
| オペレーティングシステム | 64ビット版 Windows 11 / Windows 10 | 64ビット版 Windows 11(最新アップデート適用) |
| CPU(プロセッサ) | Intel Core i7 3GHz以上、または同等のAMD | ハイエンド Intel Core i9 4GHz以上、または同等のAMD |
| システムメモリ(RAM) | 16GB以上 | 32GB以上 |
| ストレージ | 1TB SSD | 2TB PCIe NVMe M.2 SSD |
| GPU(グラフィックカード) | NVIDIA GeForce RTX 3060/3070、RTX 4060/4070 | NVIDIA RTX 4000/5000シリーズ推奨(DirectX最適化) |
操作環境における物理的な要件として、モデルの回転、ズーム、コンテキストメニューの即時実行を行うため「3ボタン光学式ホイールマウス」の接続が必須とされています。また、図面作成と3Dモデリングを並行して効率的に進める観点から、デュアルモニター環境での運用が推奨されています。
導入前に知っておきたいこと
Tekla Structuresの導入を検討するにあたり、事前に把握しておくべき実務上の注意点や課題がいくつか報告されています。
国内の一貫構造計算ソフトウェアとの役割分担
Tekla Structuresは、日本国内の建築確認申請に用いられる一貫構造計算機能(建築基準法に基づく許容応力度計算や保有水平耐力計算など)を内蔵していません。したがって、構造設計の実務においては、「SS7」や「BUILD.一貫」といった国内標準の構造計算ソフトを用いて応力解析・断面算定を行い、その計算結果を基にTekla Structures側で詳細モデリングや施工図・工作図の作成を展開するという連携体制が前提となります。単体ですべての構造設計業務が自動完了するわけではない点に留意が必要です。
専門機能の習得に伴う学習負荷と立ち上げ期間
部材製作や施工現場の納まりに直結する高度な設定・パラメーター群を備えている反面、一般的な汎用CADや設計BIMと比較して設定項目が多く、操作習得の難易度は比較的高めと評価されています。自社の標準仕様(仕口の標準図、ボルトセット、図面テンプレート等)を環境構築し、設計・作図実務者が自立して運用できるようになるまでには、一定期間の公式トレーニング受講や試行期間を確保する必要があります。
ライセンス費用の事前把握と投資対効果の精査
公式サイト上で定価が明示されておらず、利用機能に応じたコンフィギュレーション(Diamond / Graphite / Carbon)とライセンス数に応じた個別見積もり形式がとられています。このため、導入前の予算組みの段階で費用感を把握しにくく、他社ツールとの価格比較には販売窓口への直接の問い合わせが必要です。自社のプロジェクト規模や扱う構造種別において、工数削減効果や手戻り防止の経済効果が導入・維持コストに見合うかを慎重に精査することが求められます。
導入の流れ・期間
Tekla Structuresの標準的な導入手順は以下の流れとなります。導入期間については、自社の標準テンプレート整備やオペレーターの育成度合いによって変動するため、具体的なスケジュールはベンダーへの要問い合わせとなります。
- 問い合わせ・ヒアリング
株式会社トリンブル・ソリューションズまたは認定代理店の窓口へ問い合わせを行い、自社が取り扱う構造種別(鉄骨・RC・PC等)、対象プロジェクトの規模、必要なシート数などの要件を相談します。 - デモ検証・30日間無料トライアル
実際のソフトウェアを用いた製品デモの受託や、30日間の無料トライアルライセンスを利用して、自社のワークフローに対する適合性や操作性の検証を行います。 - プラン選定・見積もり
業務要件に応じて「Diamond」「Graphite」「Carbon」の各ライセンス構成と利用ユーザー数を決定し、正式なサブスクリプション見積もりを受領します。 - 契約・ライセンス発行
契約締結後、Trimble Identity(アカウント)に基づきソフトウェアライセンスおよびクラウドサービス(Trimble Connect、Tekla Model Sharing)の利用権限が付与されます。 - 環境構築・トレーニング
社内PCへのインストール、推奨ハードウェアの整備、ナレッジベース「Trimble User Assistance」やオンデマンドeラーニングを活用した操作トレーニングを実施し、自社仕様に合わせたテンプレート設定を進めます。 - 実務運用開始
パイロットプロジェクト等での試験運用を経て、実際の設計・製作・施工図面作成業務での本格運用を開始します。
よくある質問(FAQ)
- モバイル端末(スマートフォンやタブレット)でも利用できますか?
- Tekla Structures本体はWindows OS搭載のPC・ワークステーション専用ソフトウェアです。ただし、付属するクラウドサービス「Trimble Connect」のモバイルアプリ(iOS/Android対応)やWebブラウザ版を活用することで、現場や外出先からモデルの3D表示、寸法計測、属性確認、指摘事項の共有を行うことが可能です。
- 導入前に操作性を試すための無料トライアル版はありますか?
- 30日間の無料トライアル版が提供されています。また、学生や教員、教育機関向けには無償の教育用ライセンスプログラムも用意されています。
- 導入後の技術サポートや学習環境はどのように提供されていますか?
- 年中無休で閲覧可能なオンラインナレッジベース「Trimble User Assistance」が用意されているほか、メール等による技術サポート窓口が設置されています。さらに、ユーザー同士が情報交換を行う公式フォーラム(Tekla Discussion Forum)、各種部品や拡張機能をダウンロードできる「Tekla Warehouse」、自社開発向けのAPI情報を提供する「Tekla Developer Center」、オンライン学習用のeラーニングプログラムが提供されています。
- 鉄骨構造以外の建物(RC造やPC造など)でも利用できますか?
- 鉄骨造だけでなく、現場打ちコンクリート(RC造)、プレキャストコンクリート(PC造)、さらには木造のモデリングにも対応しています。鉄筋の正確な配筋モデリングや干渉チェック、PC部材の割付・製造図面作成など、コンクリート構造分野でも広く活用されています。
- サブスクリプションの最低契約期間や解約条件はどうなっていますか?
- サブスクリプションの具体的な契約期間や更新・解約条件は、提供形態や代理店ごとの契約プランによって異なるため、導入見積もり時に販売元へ直接確認する必要があります。