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Home > 品質・安全> 鹿島建設の移動式AI配筋検査、立会時間を70%短縮し省人化へ
品質・安全 2026年9月11日

鹿島建設の移動式AI配筋検査、立会時間を70%短縮し省人化へ

鹿島建設の移動式AI配筋検査、立会時間を70%短縮し省人化へ

鹿島建設株式会社は2026年9月11日、三菱電機グループの三菱電機エンジニアリング株式会社と共同で「移動式AI配筋検査システム」を開発したと発表した。門型移動装置と2台のステレオカメラを組み合わせた本システムを鉄筋コンクリート(RC)地中連続壁工事の長大な鉄筋籠へ初適用し、発注者立会検査時間を従来の約300分から約100分へと約70%短縮した。

門型移動装置とステレオカメラによる配筋検査の自動化

開発の経緯と地中連続壁工事への初適用

鉄筋コンクリート造の構造物において、配筋検査はコンクリート打設後に不可視となる骨組みの健全性を証明する最重要の品質管理工程である。しかし、従来の現場管理では、施工管理者や発注者が過密に組まれた配筋の上を歩き、メジャーやスタッフを当てて目視で本数・間隔・かぶり厚を測り、膨大な箇所の黒板入り写真を撮影・整理する必要があった。特に地下構造物を構築するRC地中連続壁工事などで用いられる鉄筋籠は、長さ十数メートル、重量数十トンに達する大型部材であり、検査に伴う作業員の高所歩行や転落リスク、長時間の拘束が大きな課題となっていた。

こうした課題を解決するため、鹿島建設と三菱電機エンジニアリングは、従前のハンディ型端末によるAI配筋検査技術をさらに発展させ、現場に設置した門型レール上を移動しながら自動で検査を行う「移動式AI配筋検査システム」を実用化した。関西高速鉄道株式会社が発注したRC地中連続壁工事の実現場に本システムが初投入され、その実用性と省人化効果が実証された。

本システムの開発に至るまでには、要素技術の開発から現場実証、制度基準への適合に至る段階的なステップが存在する。

年月 開発・運用の節目 技術展開および運用の詳細
2020年度 国交省革新的技術プロジェクトでA評価 国土交通省の革新的技術導入・活用プロジェクトにおいて、鹿島建設が協力した三菱電機エンジニアリングの配筋検査技術が総合評価Aを獲得。
2021年2月 可搬型AI配筋検査システムの提供開始 三菱電機が現場向けにステレオカメラを用いたAI配筋検査端末を製品化。配筋間隔や本数の自動検出を開始。
2023年1月 三菱電機エンジニアリングへ事業移管 製造・販売元を三菱電機エンジニアリングへ一本化し、建機レンタル会社を経由した全国の現場への普及体制を構築。
2023年7月 国交省「鉄筋出来形計測の実施要領(案)」策定 国土交通省がデジタルデータを活用した配筋検査の公的基準を提示。画像計測による検査の省力化が制度面で後押しされる。
2026年9月 移動式AI配筋検査システムの発表 門型走行フレームとステレオカメラ2台を連動させた移動式システムを開発。関西高速鉄道発注工事で立会時間70%削減を実証。

参考記事: 配筋検査の実施タイミングと許容基準数値|アプリ活用と遠隔臨場で業務効率化

検査プロセスの変革と従来手法との性能比較

従来の配筋検査は、目視と手作業をベースとした「アナログ計測」であり、検査結果の集計や発注者への提出帳票の作成にも多大な間接工数が割かれていた。2021年以降に普及した可搬型AI端末(Field Bar®など)によって帳票作成を含む作業時間は約60%削減されたが、作業員が端末を把持して鉄筋の周囲を歩き回る必要性は残されていた。

今回開発された「移動式AI配筋検査システム」は、検査対象となる鉄筋籠をまたぐように門型移動装置を配置し、搭載された2台のステレオカメラがレールに沿って自動走行しながらスキャンする構造を採っている。撮影された画像データからAIが鉄筋の径、本数、ピッチ(間隔)を即時に三次元座標として抽出し、設計BIM/CIMモデルや基準値との照合を自律的に行う。

従来の手作業による検査、可搬型端末による検査、そして今回実用化された移動式システムの違いを整理すると以下の通りである。

項目 従来の目視・手計測検査 可搬型AI配筋検査端末 今回の移動式AI配筋検査システム
計測装置・機材 スケール、検測ロッド、工事用黒板、デジタルカメラ 手持ち式ステレオカメラ端末、専用タブレット 自動走行型門型フレーム、高解像度ステレオカメラ2台、制御PC
計測・移動方法 作業員が鉄筋上を歩行し、手作業で1箇所ずつ検測 作業員が端末を持ち、所定の撮影ポイントを歩行移動 門型装置がレール上を電動自律走行し、連続自動スキャン
立会検査時間 鉄筋籠1基あたり約300分 鉄筋籠1基あたり約180分〜200分 鉄筋籠1基あたり約100分(従来比約70%削減)
安全性リスク 過密配筋や高所足場上の歩行による転倒・踏み抜きリスク 端末保持による片手ふさがりや足元不安が残存 作業員が部材上を歩く必要がなく、地上からの遠隔操作で完結
帳票・データ化 撮影写真を事務所で手作業整理しExcel等に入力 クラウドや専用ソフト連携で自動帳票生成 スキャン完了と同時に三次元出来形データと合否判定帳票を出力

本システムは、国土交通省が定めた「デジタルデータを活用した鉄筋出来形計測の実施要領(案)」および「デジタル写真管理情報基準(令和5年3月)」に完全準拠している。そのため、検査で取得された点群座標や高精細画像は、公的な電子納品用データや出来形管理記録としてそのまま発注者へ引き渡すことが可能である。また、新技術情報提供システム(NETIS)に登録されている基盤技術(登録番号:KT-230164-A)を深化させたハードウェア構成となっており、公共工事における技術提案(総合評価落札方式)においても極めて優位性の高いソリューションとなる。

参考記事: 建設RX・施工ロボットとは?設立背景や主要技術・現場での活用メリットを解説

建設業界の各プレイヤーに与える実務的インパクト

移動式AI配筋検査システムの登場は、単なるツールの変更にとどまらず、元請けゼネコンの施工管理モデル、現場管理者の業務フロー、そして専門工事業者との協業体制に構造的な変化をもたらす。

ゼネコン(元請け):重要工種の自律計測による工程管理の刷新と品質統治の強化

大手・準大手ゼネコンにとって、2024年4月から施行された時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間、特別条項付きでも年720時間以内)への対応は経営の根幹を揺るがす課題である。特に大型の土木・建築プロジェクトでは、コンクリート打設前の配筋検査がクリティカルパス(最重要工程)となりやすく、検査待ちや手戻りによる工程遅延が現場全体の労務時間を圧迫していた。

本システムの導入により、鉄筋籠1基あたりの立会検査時間が従来の300分から100分へと約70%圧縮されることは、打設工程への移行を早め、1サイクルあたりの工期を確実に短縮させる効果を持つ。さらに、全数・連続検査に近い高密度なデジタルエビデンスが自動的にクラウドへ保存されるため、人為的な測定ミスや帳票の改ざんリスクを原理的に排除できる。

過去に発生したシールドトンネル工事での部材無断切削事案などに見られるように、現場の裁量や目視確認に過度に依存した品質管理は、ひとたび不祥事が生じれば巨額の是正費用と社会的信用の失墜を招く。全計測データを三次元座標とタイムスタンプ付きで保全する仕組みは、元請け企業が発注者や社会に対して施工の正当性を証明する「ガバナンスの防壁」として機能する。

参考記事: 建設業の2024年問題とは?時間外労働上限規制のポイントと現場が取るべき対策を徹底解説
参考記事: 鹿島建設、都下水道工事で2箇所を無断切削|現場統治の抜本的見直しへ

現場監督・施工管理者:炎天下でのメジャー計測と写真整理からの解放

現場監督や主任技術者の日常業務において、配筋検査は精神的・肉体的な負荷が最も集中する作業の一つであった。夏場の照り返しが厳しい鉄筋の上で、不安定な姿勢を取りながらメジャーを当て、チョークでマーキングし、何百枚もの野帳写真を撮影する作業は、熱中症リスクや足元の踏み抜き・転落事故と常に隣り合わせであった。

移動式AI配筋検査システムが導入された現場では、管理者は地上の安全な位置からタブレット端末で装置の移動と撮影を指示するだけで済む。危険な高所や過密配筋上を歩行する物理的リスクが完全に解消されると同時に、事務所へ戻ってから数時間かけて行っていた写真台帳の整理やExcel入力作業がゼロになる。

浮いた時間は、施工計画の精緻化や下請け業者との危険予知(KY)活動、協力会社への段取り指示といった、本来注力すべき高付加価値なマネジメント業務へと再配分される。これは若手施工管理者の離職防止や、現場定着率の向上にも直結する実務的なメリットである。

参考記事: 遠隔臨場とは?現場の立ち会い待ちをゼロにする仕組みと最新ガイドラインの重要ポイント

構造的変化:属人的な「目視確認」から「自律スキャンとデータ保全」への移行

建設産業全体が直面している構造的変化は、職人や技術者の「勘と経験」に頼った品質確認から、機械とアルゴリズムによる「客観的データの常時取得」への完全なシフトである。国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」では、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割達成(生産性1.5倍向上)することが掲げられている。

配筋検査の自動化は、これまで「人間の目が不可欠」と信じ込まれていた領域にロボティクスと画像認識AIが踏み込んだ象徴的な事例である。出来形管理が点(抜き取り計測)から面(三次元スキャン)へと移行し、計測結果がリアルタイムでBIM/CIMモデルと統合されることで、将来の建物の維持管理や解体に至るライフサイクル全体で利用可能なデジタルツインが現場で自律的に生成される環境が整いつつある。

参考記事: 鹿島建設、三笠ぽんべつダムで誤差±5cmの自動測量を導入し盛土を3D管理

ConShiftの視点:点から線・面への自律スキャンが変える品質保証のあり方

鹿島建設と三菱電機エンジニアリングによる今回の共同開発は、単なる「検査機器の改良」ではなく、施工DXにおける自動化のフェーズが第1段階(人間の作業をデジタル補助する可搬型ツール)から、第2段階(ハードウェア自体が自律走行してデータを吸い上げる移動型プラットフォーム)へ移行したことを示している。

三菱電機エンジニアリングの可搬型AI配筋検査端末(NETIS番号:KT-230164-A)はすでに300社以上の現場に導入されており、現場での画像認識精度とアルゴリズムの堅牢性は十分に証明されてきた。しかし、端末を持って歩くのが人間である限り、大型土木工事や大規模再開発の現場では、移動自体の労力や計測漏れのリスクを完全には排除できない。

この課題に対し、鹿島建設がダム工事等で培ってきた自動化施工技術(自律建機「A4CSEL」や無人搬送車「A4CSEL AGV」による面的密度測定)の思想を、地下連続壁という過密な鉄筋構造物の検査に持ち込んだ点に本技術の独自性がある。カメラを門型フレームに載せて走行させるという機構は、一見するとシンプルな機械化に見えるが、土木・建築の過酷な環境下で±数ミリ単位の計測精度を維持しつつ連続スキャンを成立させる制御技術は、総合電機・エンジニアリングの制御ノウハウを持つ三菱電機グループとの協業体制があってこそ実現したものである。

今後、ゼネコン各社に求められるのは、単一の工種で終わらせない「データ連携の横展開」である。配筋検査で取得された三次元点群データは、そのままコンクリート打設時の充填シミュレーションや、かぶり厚不足の事前アラート、さらには遠隔臨場システムと直結させた発注者側のオフサイト承認(遠隔立会)へと統合されなければならない。自律走行型の計測デバイスが現場を巡回し、人間はクラウド上で異常値のレビューと最終承認のみを行う運用モデルこそが、i-Construction 2.0が描く省人化の到達点となる。

明日から現場と経営が取り組むべき次の一歩

本ニュースを踏まえ、ゼネコン経営層や現場リーダーが自組織の生産性向上に向けて直ちに着手すべき具体的なアクションを提示する。

1. 現場内の重要検査にかかる拘束時間と手戻りコストの棚卸し

自社の施工現場において、配筋検査や出来形測定にどれだけの工数が費やされているかを定量的に可視化することから始める。特に発注者立ち会いまでの待機時間、写真撮影および報告書作成に費やしている残業時間を抽出し、どの工種からデジタル化・自動化ツールを投入すべきか、投資対効果の優先順位を明確にする必要がある。

2. 国交省「鉄筋出来形計測の実施要領(案)」に対応した機材と運用の検証

国土交通省が2023年7月に策定した実施要領(案)やNETIS登録技術(KT-230164-Aなど)の要件を確認し、自社現場への導入可否を検討する。まずは手持ち型のAI配筋検査端末や施工管理アプリの活用から着手し、三次元計測データを用いた出来形管理のオペレーションに現場担当者を習熟させることが、将来の自律型ロボティクス導入への確実なステップとなる。

3. 「移動式・自律型」ハードウェアの適用が可能な定型工種の抽出

地中連続壁の鉄筋籠製作ヤードやPC(プレキャスト)コンクリート部材の製造工場、シールドトンネル坑内など、移動レールや固定ガイドが設置しやすい定型的な作業空間をリストアップする。屋外の不整地全体を一足飛びに完全自動化することは困難であっても、部材加工ヤードや同一断面が連続する構造物から移動式AIスキャンを試験導入することで、確実な省人化成果を早期に創出できる。

出典: Yahoo!ファイナンス
出典: 鹿島建設株式会社 プレスリリース
出典: 三菱電機エンジニアリング株式会社 製品情報

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監修者プロフィール
松本 章

松本 章

大手コンサルティングファームにて設備保全プロジェクトに従事。 その後、スタートアップの経営メンバーとして事業運営に携わり、業界の課題解決を目指してConShiftを立ち上げ。 現在は建設DXメディア「ConShift」を運営し、現場のリアルとテクノロジーを融合させた視点から情報発信を行っている。

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