GPGloveとは?
GPGloveは、株式会社アカサカテックが開発・提供する、作業船や地盤改良機・杭打ち機向けのマシンガイダンスおよび施工誘導管理システムです。水深の深い海底や地中といった目視が不可能な不可視領域において、GNSS(全球測位衛星システム)やトータルステーション(TS)から得られる高精度な位置データと各種センサー情報を統合し、作業船の自船位置やグラブバケット、重機アタッチメントの現在座標をリアルタイムで画面上に可視化します。海上土木や基礎工事において、手作業による誘導や過剰な資材投入を防ぎ、施工精度の均一化と作業安全性の向上を支援するICT施工ソリューションです。
主な機能
GPGloveは、海上土木における起重機船・グラブ浚渫(しゅんせつ)船の操船誘導から、陸上での地盤改良・杭打ち機の位置決めまで幅広く対応する機能を備えています。主な機能は以下の3つの領域に大別されます。
作業船・重機の誘導および施工位置の可視化機能
- リアルタイム位置誘導表示
GNSSやTSから取得した高精度な座標データをもとに、作業船の船体位置、ブームトップ、グラブバケットの位置をパソコン画面上にリアルタイムで描画します。オペレーターは目視できない水深下のバケット刃先や目標施工位置との高低差・離れ量を画面数値から把握でき、ミリ・センチ単位の正確なアプローチが可能になります。 - 多彩な誘導・記録モード
施工内容や工種に応じた複数の誘導方式を選択できます。あらかじめ設定した座標へ誘導する「目標点誘導」や「入力座標への誘導」をはじめ、現場の基準に沿わせる「基準線誘導」「簡易誘導」、特定の施工ブロックを区切る「任意作業枠誘導」、さらに「ランダム記録(ブームトップ誘導/枠管理)」などに対応しており、現場の施工計画に合わせた柔軟なオペレーションを実現します。 - 操舵室とクレーン操作室の画面共有
作業船の操舵室(ブリッジ)とクレーン操作室の間で、ネットワークを介して同一の誘導画面をリアルタイムに共有・連動できます。船体を保持・移動させる船長と、クレーンやバケットを直接操作するオペレーターが同一の施工進捗状況や誘導目標を同時に確認できるため、無線による指示伝達のタイムラグや誤認事故のリスクを低減します。
施工進捗の面的管理および設計データ連携機能
- 進捗の面的色付け管理
捨石投入や浚渫作業、杭打ちが完了した箇所に対し、あらかじめ設定した作業枠サイズに応じた色塗りが画面上で自動的に実行されます。施工済みエリアと未施工エリアが面的にグラフィカル表示されるため、施工の抜け漏れや重複施工を一目で識別でき、手戻り作業を未然に防止します。 - CADデータ(DXF)および見取り図の取り込み
設計図面であるDXFデータのインポートに対応しています。現場の見取り図や工区分割、目標打設点、浚渫計画線を背景レイヤーとして読み込むことで、複雑な設計形状と実施工位置との関係性を同一画面上で照合しながら施工を進められます。 - 多様な測地系・座標系の自動変換
世界測地系(JGD2000/JGD2011等)はもちろん、旧日本測地系や現場独自のローカル座標系など、各種の測地系に対応しています。公的な設計成果物と現場の測位座標をスムーズに合致させ、座標変換に伴う人為的計算ミスを排除します。
計測データの記録および帳票出力機能
- 投入・施工座標の自動記録と帳票出力
バケットを開放した瞬間や所定深度への到達時における三次元座標、計画位置からのズレ量などの施工実績データを自動でロギングします。収集された計測データは専用の帳票形式で出力できるため、日々の出来形管理や発注者への提出書類作成にかかる事務工数を大幅に削減します。 - 実績画面のプリントアウト機能
色塗りによって進捗状況が可視化された施工実績画面を、そのまま画像や帳票として印刷出力できます。現場事務所での工程会議や、元請け・発注者に対する直感的な進捗報告資料として活用可能です。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
港湾土木や浚渫・消波工において材料ロスや過掘削を抑制したい企業
- 水中の不可視領域での施工による資材過剰投入や掘り残し
海上土木工事では、海底面や水中のバケット位置を目視で確認できないため、捨石マウンドの造成や消波ブロック据付で設計量以上の資材を過剰に投入してしまう歩掛の悪化が発生しがちです。GPGloveを導入することで、GNSSとセンサーによる三次元ガイダンス画面を見ながらミリ〜センチ単位の据付が可能となり、投入箇所の面的色塗り管理によって重複投入を防止できます。これにより材料ロスの大幅な削減と作業効率化が達成されます。 - 熟練船長とクレーンオペレーター間の連携ミスによる手戻り
起重機船の施工では、操舵室とクレーン操作室の息が合わない場合、位置修正や合図確認に多大な時間を要します。GPGloveは両室で同一画面をリアルタイム共有できるため、共通の誘導画面を見ながら迅速かつ安全に位置決めを行え、海上作業全体のサイクルタイムを圧縮できます。
地盤改良や杭打ちなど地中変位の厳密な施工管理が求められる専門工事業者
- 地中のアタッチメント位置や施工ピッチのズレによる品質不良リスク
地中深く削孔・圧入を行う地盤改良工や既製杭打設工では、地表面からはロッドやアタッチメントの傾き・深度・芯ズレを正確に把握することが困難です。GPGloveの重機ガイダンス仕様を導入すれば、キャブ内モニターで目標芯位置に対するアタッチメントのリアルタイム座標と傾斜を直感的に確認できます。手元作業員による検測作業を最小限に抑えつつ、杭芯ズレのない高精度な基礎施工を均一に維持できます。
向いていない企業・現場
内陸の小規模土工や単機能バックホウの局所的な床掘りが主体の企業
- 陸上土工における小規模掘削を中心とする現場
GPGloveは作業船や地盤改良機、杭打ち機など、不可視領域への投入・削孔を伴う特殊重機・大型作業船に強みを持つシステムです。一般的なバックホウやブルドーザによる小規模な道路床掘りや構造物周りの掘削作業においては、汎用的な小型建機向けマシンガイダンス(2D-MGシステム等)を導入した方が、ハードウェア構成やコスト面で適合しやすい場合があります。
RTK-GNSS補正情報やトータルステーションの視通が完全に途絶する地下密閉空間
- トンネル坑内奥深くや完全密閉型の地下工事
GNSS電波の届かないトンネル内部やシールド坑内などでは、衛星測位を前提とした標準的な構成では十分な精度を発揮できません。自動追尾トータルステーション(TS)との連携構成を選択するか、坑内専用の自己位置推定・測位誘導システムを別途検討する必要があります。
類似ツールとの比較
ICT建機や施工管理システムの導入を検討する際、マシンコントロール(MC)とマシンガイダンス(MG)の違い、および陸上建機向けと作業船向けシステムの特性差を理解しておく必要があります。
油圧ショベルやブルドーザ向けに普及している一般的なマシンコントロール(MC)システムは、設計データに合わせて作業機の油圧バルブを自動制御し、バケット刃先やブレードを設計面に自動追従させる半自動技術です。大規模な道路土工や法面整形では非常に高い平滑性と省力化を発揮しますが、油圧系統への専用電磁弁の組み込みが必要となるため、導入コストが高額になりやすく、対象機種も特定の陸上土工機に限定される傾向があります。
これに対し、アカサカテックの「GPGlove」はマシンガイダンス(MG)に特化した施工誘導システムです。油圧を直接制御するのではなく、モニター表示やアラーム音でオペレーターの手動操作をアシストするため、既存の起重機船、グラブ浚渫船、地盤改良機、杭打ち機といった多様な大型特殊機械へ柔軟に後付け(レトロフィット)導入できます。特に海上土木分野においては、潮流や風による船体動揺、水深による目視不能領域の存在など、陸上土工とは異なる特殊な環境への対応が不可欠です。GPGloveは操舵室と操作室の2画面連携や面的色付け管理、各種測地系対応など、作業船実務に特化した誘導・管理機能を標準で実装している点で、汎用的な陸上用ガイダンスシステムと一線を画しています。
料金・プラン
GPGloveの導入費用・利用料金は、公式サイトにおいて一律の定額プランは公表されておらず、要問い合わせ(都度見積もり)となっています。
本システムは、魚礁設置のように1m程度の精度で十分な工事(DGPS構成)から、港湾浚渫や杭打ちのようにセンチメートル単位の高精度が求められる工事(RTK-GNSSや自動追尾TS構成)まで、現場の要求仕様や予算規模に合わせてハードウェア構成が細かくカスタマイズされます。そのため、見積もりを取得する際は以下の点を確認することを推奨します。
- 測位方式と要求精度
対象工種において必要とされる測位精度(サブメートル精度かセンチメートル精度か)と、それに応じたGNSS受信機・センサーの構成要件。 - 初期費用と機器提供形態
測位センサーや車載PC、インターフェースユニットの購入費用、取り付け・初期キャリブレーション費用の有無、または工事期間に応じたレンタル・リースの可否。 - ネットワーク・補正情報利用料
RTK-GNSS運用時に利用する電子基準点補正データ配信サービスや携帯通信回線の月額費用の負担区分。 - 保守・サポート体制
現場ごとのシステムカスタマイズ費用や、トラブル発生時の現地出張サポート対応条件。
導入事例・実績
株式会社こんどう:起重機船での藻場造成工事において捨石材料削減と優良賞受賞を達成
福井県大飯郡に拠点を置く株式会社こんどうは、2017年7月に福井県おおい町大島における漁業施設整備工事(藻場造成工事)において、同社が保有する350t起重機船『こんどうマリン3号』にGPGloveを導入しました。
同工事では、基礎工として70,000m³の捨石投入、および4,500個におよぶ消波ブロックの据付という大規模な海上作業が実施されました。深浅測量システム『GPMate-ECHO』とGPGloveを併せて活用し、不可視である海底地形とバケット位置を画面上で照合しながら投入管理を行った結果、捨石投入作業における大幅な材料ロスの削減と施工効率化を同時に達成しました。日常的な現場作業で高精度な施工管理を定着させたことが高く評価され、同工事において同社は「令和元年度 優良工事等事業者 優良賞」を受賞しています。
朝日丸建設株式会社:航路浚渫工事における現場最適化カスタマイズ運用
三重県伊勢市に拠点を置く朝日丸建設株式会社は、鵜殿港における航路浚渫工事(2024年〜2025年)においてGPGloveを採用しました。同社の作業手順や船内環境、オペレーション上の個別要望に合わせたシステムカスタマイズを実施した上で納入・運用されており、過酷な海上浚渫の現場要件に即した柔軟なガイダンス運用が行われています。
国土交通省新技術情報提供システム(NETIS)登録(KTK-230005-A)の実務的メリット
GPGloveは、2024年1月に国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録されました(登録番号:KTK-230005-A)。公共工事においてNETIS登録技術を採用することは、施工企業にとって技術面だけでなく総合評価方式入札や工事成績評定において直接的なメリットをもたらします。
直轄工事や自治体発注の港湾土木工事において、NETIS登録された施工誘導技術を活用する施工計画を提案した場合、総合評価落札方式での技術提案評価(加点対象)につながる可能性があります。さらに、実際の施工プロセスでGPGloveを活用して工程短縮や出来形精度の向上、安全管理の改善を達成し、工事完了後の「新技術活用状況調査」を適切に報告することで、工事成績評定点への加点評価が期待できます。2024年4月以降、建設業全体で時間外労働の上限規制が適用され、「i-Construction 2.0」への対応が急務となる中、公的な新技術認定を受けたガイダンスシステムの導入は、発注者に対する信頼性確保と受注競争力の強化に直結します。
現場要件に応じた測位構成の選択肢(DGPS方式とRTK-GNSS方式)
GPGloveの大きな特徴の一つは、求める施工精度と現場の制約条件に応じて、柔軟に測位ハードウェアの組み合わせを選択できる点にあります。過剰スペックによる無駄な設備投資を抑えつつ、必要な精度を確実に担保できます。
| 測位方式 | 想定精度 | 適した主な工種・用途 | システム構成の特長 |
|---|---|---|---|
| DGPS仕様 | 約1m程度 | 魚礁設置、捨石の大まかな投入、航路標識設置 | 単独測位に比べ安定した位置特定が可能。導入コストを抑えやすく、広範囲のラフな誘導に適する。 |
| RTK-GNSS仕様 | 約1cm〜数cm | 航路浚渫工、基礎捨石マウンド均し、杭打ち芯決め | 基準局補正データを受信し高精度測位を実現。ミリ〜センチ単位の出来形管理や過掘削防止に必須。 |
| トータルステーション(TS)仕様 | ミリ単位 | GNSS電波遮蔽エリア、橋梁直下、精密地盤改良 | 自動追尾型TSによる光波測距測角。上空視界が得られない構造物近傍でも高精度ガイダンスが可能。 |
導入前に知っておきたいこと
GPGloveの導入を検討するにあたり、ユーザー側から公表されている不満や不具合などの直接的な課題報告は現時点では確認できていません。一方で、システムの性質上、事前に留意しておくべき技術的要件が存在します。
第一に、RTK-GNSS測位を用いてセンチメートル精度の施工管理を行う場合、電子基準点補正サービス(ネットワーク型RTK)を利用するための安定したモバイル通信環境、または現場近傍への自前基準局の設置が必要となります。沖合や電波の届きにくい湾岸エリアで作業を行う場合は、事前の通信キャリア回線状況の確認や、自前基準局用無線設備の準備が不可欠です。
第二に、本システムはガイダンス(視覚・音響による操作誘導)システムであるため、油圧ショベルの自動停止や自動追従を行うマシンコントロール(MC)とは異なり、最終的なレバー操作はオペレーター自身の技術に委ねられます。画面表示を正確に読み取り、バケットの昇降や旋回をコントロールするための社内オペレーター教育や画面配置の最適化が求められます。
導入の流れ・期間
GPGloveを導入する際の標準的な実務プロセスは以下のとおりです。なお、GPGloveの具体的な導入期間(発注から実機稼働まで)は、対象重機・船舶の種類やハードウェアのカスタマイズ範囲によって異なるため、要問い合わせとなっています。
- 問い合わせ・現場条件のヒアリング
施工対象(グラブ船、起重機船、地盤改良機等)、現場海域・現場環境、求める測位精度(DGPSまたはRTK-GNSS等)、画面共有の有無などをベンダー側と協議します。 - 仕様選定・システム構成の提案
現場の要件に応じて、搭載するGNSS受信機、方位センサー、角度センサー、車載PCおよび表示モニターの構成を確定します。 - 見積もり・契約
ハードウェア費用、ソフトウェアライセンス、設置調整・初期設定費用などを含む見積書の内容を確認し、契約手続きを行います。 - 実機への艤装・センサー設置・キャリブレーション
作業船や施工重機への各種アンテナ、センサー類、車載モニターの取り付け工事を実施します。船体寸法やクレーン旋回中心、ブーム長、バケット刃先の寸法測定(キャリブレーション)を厳密に行い、画面表示と実位置を合致させます。 - 現場運用開始・操作指導
設計CADデータのインポートや工区設定、色塗り枠サイズの設定を行い、現場オペレーターへの操作指導を経て実施工へと移行します。
よくある質問(FAQ)
- クレーン操作室と操舵室で別々のモニター表示を見ることはできますか?
- GPGloveはクレーン操作室とブリッジ(操舵室)の間で同一の誘導画面をリアルタイム共有する機能を備えています。船長とオペレーターが共通の誘導座標・施工進捗を同時に確認しながら協調作業を行えます。
- 自社で保有している既存の作業船や重機に後付け(レトロフィット)できますか?
- 後付け導入に対応しています。新車・新造船への組み込みだけでなく、現在稼働中の既存起重機船、グラブ浚渫船、地盤改良機などにGNSSアンテナや各種センサー、PCを艤装して運用することが可能です。
- 海上ではなく陸上の地盤改良工事や杭打ち工事でも使用できますか?
- 使用可能です。GPGloveは作業船誘導だけでなく、地盤改良機や杭打ち機向けの重機ガイダンス仕様が用意されており、アタッチメント位置の誘導や打設位置の面的管理に活用できます。
- 画面上で読み込める設計図面データ形式は何ですか?
- CAD標準フォーマットであるDXFデータの取り込みに対応しています。工区割りや目標杭位置、海底計画断面などの設計図面を背景レイヤーとして重畳表示させることが可能です。
- 無料トライアルやデモ機の貸し出しは実施されていますか?
- 公式サイト上で無料トライアルの有無に関する常設の記載は確認できません。デモ実演や現場への適合性確認については、横浜本社、中部営業所、福岡営業所の各窓口へ直接ご相談ください。
- 導入後のサポート体制や拠点網はどうなっていますか?
- 開発元のアカサカテックは、横浜本社・中部営業所・福岡営業所の国内3拠点体制で顧客対応を行っています。現場環境に応じたシステムのカスタマイズ開発や導入時の現地調整などに対応しています。