KYOEI COMPASSとは?
協栄産業株式会社が開発・提供する「KYOEI COMPASS(現行バージョン:KYOEI COMPASS 2.0)」は、ゼネコンや建築工事業者、サブコンなどを対象とした建築専門の見積書作成・積算システムです。資材価格の変動や労務単価の上昇が続く中、複雑化する大規模建築プロジェクトの積算・見積作成において、属人的な手計算やExcel管理によるミス・転記工数の肥大化を解消するために開発されました。公式サイトによると1,500社以上の導入実績を持ち、最大16階層までの多階層構造、市販単価データや過去物件からの自動値入れ、複数業者の下見積比較機能などを標準で備えています。
主な機能
KYOEI COMPASS 2.0は、大規模建築特有の複雑な工種・明細を効率的に処理するための機能を備えています。主な機能を用途別に分類して解説します。
編集・明細作成機能
- リボン形式メニューとお気に入り登録
Office製品に類似したリボン形式のユーザーインターフェースを採用しており、頻繁に利用する機能を「お気に入り」メニューに集約できます。直感的な操作が可能なため、積算担当者の習熟にかかる時間を短縮し、日常的な操作ミスを低減します。 - 列パターン編集と計算根拠式の表示列追加
編集画面の表示列を業務やプロジェクトに合わせて自由にカスタマイズできるほか、数量や単価の算出根拠となる計算式を表示する列を追加できます。数値の妥当性を同一画面上で確認できるため、検算や上長レビューにかかる確認工数を削減します。 - 計算パターン機能(NET・提出差額・利益率の管理)
各明細行において、発注予定額(NET)と提出見積額の差額や目標利益率をリアルタイムに表示・登録できます。請負金額の決定前に現場ごとの採算性を精緻に把握できるため、実行予算の作成や赤字転落リスクの早期検知に寄与します。 - 上下2段表示とドラッグ&ドロップによる並び替え
1つの明細行に対して数量や単価を上下2段で表示でき、提出用と社内原価用の数値を同時に比較・確認できます。明細行や列の移動もドラッグ&ドロップで容易に行えるため、見積書の組み替えや構成変更が迅速に行えます。
多棟管理・見積比較・シミュレーション機能
- 最大16階層の多階層明細構造
一般的な積算ソフト(5〜10階層程度)を大きく上回る最大16階層のツリー構造に対応しています。複合ビル、商業施設、工区分けが必要な大規模開発など、棟別・フロア別・工種別・部位別に細分化された明細体系を単一の物件データ内で破綻なく再現できます。 - 見積明細書比較機能
設計変更やバリューエンジニアリング(VE)に伴う変更見積、あるいは過去の類似物件との比較において、差分が発生している行や項目を自動で色分け表示します。変更箇所の見落としを防ぎ、発注者への増減説明資料の作成工数を低減します。 - 科目別集計機能と一括下見積・総額シミュレーション
同一プロジェクト内に複数の棟が存在する場合、共通する工種や明細の数量・金額を合算し、一括で同一単価を設定できます。また、総額を固定した按分シミュレーションや、複数工区を束ねた協力会社への一括下見積依頼にも対応します。
共同作業・外部データ連携機能
- 専用サーバー不要の複数人同時編集
独立したデータベースサーバーや専用サーバー機を新たに設置することなく、社内の通常のネットワーク環境(LAN等)を利用して同一物件のデータを複数人で同時に閲覧・編集できます。大規模案件における工種ごとの分担作業を可能にし、短納期の見積提出に対応します。 - Excel双方向互換・標準データフォーマット対応
作成した内訳明細データはExcel形式(.xlsx)との双方向入出力に対応しているほか、公共建築工事の積算標準である営繕積算システム「RIBC」や一般社団法人日本建設業連合会が推進する「BCSフォーマット」とのデータ連携が可能です。発注者や元請企業からの指定書式への変換作業を円滑化します。 - 調達・環境プラットフォーム連携(GACCI・One Click LCA)
見積徴収業務を効率化するクラウドサービス「GACCI」との連携ファイル出力や、建物のライフサイクルアセスメント(LCA)を自動算定するソフトウェア「One Click LCA」への連携データ作成に対応しています。積算業務を通じて脱炭素化の算定や協力会社との見積受発注プロセスのデジタル化を推進できます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
大規模建築や複合棟プロジェクトを手がけ、深い階層と共同作業を要するゼネコン・建築会社
- 階層が深くExcelのリンクや計算式が破損しやすい
最大16階層までのツリー構造を標準でサポートしているため、棟別・工区別・工種別・部位別といった複雑な明細体系を崩さずに管理できます。Excel管理で頻発する数式エラーや行挿入による合計ズレを排除し、正確な内訳明細書を作成できます。 - 短納期の大型案件で見積作成の分担作業が必須である
専用サーバーや高価なデータベースを導入することなく、通常のネットワーク環境下で複数人による同一物件の同時編集が可能です。工種別(躯体、仕上、設備等)に積算担当者が同時並行で作業を進められるため、締め切り直前の残業削減と見積提出の迅速化につながります。
協力会社からの下見積比較や設計変更に伴う差分管理を厳格化したい企業
- 業者ごとの見積条件や変更見積の差分精査に膨大な時間がかかっている
見積明細書比較機能により、変更見積や業者間の提出単価の差分行を色分けして視覚的に把握できます。変更点の見落としを防ぎ、VE提案や下請業者との価格交渉における根拠数値を迅速に提示できます(導入事例では手拾い作業に比べ約50%の時間短縮を達成した実績もあります)。 - 提出金額だけでなく社内目標利益(NET)を同時に管理したい
計算パターン機能や上下2段表示により、提出見積額と下請発注予定額(NET)、利益率を同一明細上で確認しながら値入れを行えます。請負契約前の段階で確定的な目標粗利益を固定できるため、着工後の原価割れや赤字工事の発生を抑制します。
向いていない企業・現場
土木一式工事が中心で、公的歩掛の自動積算や最低制限価格シミュレーションを重視する企業
- 土木工事の自治体基準や電子設計書の自動取り込みが必要な場合
KYOEI COMPASSは建築工事の見積作成に特化した設計となっており、全国自治体の土木積算基準や歩掛データの自動更新、電子設計書(PDF・XML)の解析には対応していません。土木公共工事を主力とする企業であれば、土木積算に特化したソフトの導入を検討した方が業務適合性が高くなります。
住宅リフォームや単一工種の小規模工事が主で、高スペックPCの用意が困難な工務店
- 階層が浅く帳票作成のみをシンプルかつ低負荷な環境で完結させたい場合
本ソフトは推奨メモリ16GB以上・空き容量100GB以上と、一般的な帳票作成ソフトに比べて高いハードウェアスペックを要求します。数階層で完結する小規模リフォーム工事や個人住宅の見積もりであれば、より動作が軽量で小規模向けに特化した汎用見積ソフトを選択する方が運用負荷を抑えられます。
類似ツールとの比較
| ツール名 | 特徴 | 料金 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| KYOEI COMPASS | 最大16階層対応、専用サーバー不要の複数人同時編集、GACCI・One Click LCA連携 | 年額122,100円〜(月額換算10,175円〜) | 中堅〜大手のゼネコン、複合建築や多棟案件を扱う建築会社 |
| 楽王 | 建築・電気・空調衛生など多工種に対応、Excelライクな操作性、サブスク〜企業向けプラン展開 | 要問い合わせ(サブスク版・エンタープライズ版あり) | 建築から設備まで幅広く手がけ、柔軟な料金プランを選びたい企業 |
| 建築みつも郎 | 中小工務店向けの知名度、自由度の高い書式設定、業者別発注書の分割作成に対応 | 要問い合わせ(パッケージ・ライセンス販売) | 小規模〜中規模の工務店、リフォーム専業会社 |
| Gaia | 全国自治体の土木積算基準・歩掛データを網羅、最低制限価格シミュレーション機能 | 要問い合わせ | 公共土木工事の入札積算を主力とする土木建設会社 |
ツール選定の基準として、扱う工事の種別(建築か土木か)が最初の分岐点となります。公共土木工事における自治体の最新歩掛や電子設計書の取り込み、最低制限価格の逆算シミュレーションを主目的とする場合は、土木積算で広く使われているGaiaなどの専用システムが適しています。
建築分野において比較する場合、プロジェクトの規模と階層深度が判断のポイントです。戸建て住宅や小規模リフォームなど、階層が浅くスピーディな帳票出力や発注書分割を重視する場合は建築みつも郎が適しています。一方、ビル建築や商業施設、複数棟からなる大規模プロジェクトで、最大16階層に及ぶ複雑な内訳構成や、専用サーバーを立てずに同一ネットワーク内で複数人による同時分担作業を行いたい場合は、KYOEI COMPASSが有力な候補となります。また、環境負荷算定(One Click LCA)や調達DX(GACCI)といった外部サービスとの直接連携を視野に入れる場合も、KYOEI COMPASS独自の機能構成が役立ちます。
料金・プラン
KYOEI COMPASS(KYOEI COMPASS 2.0)は、1年単位のサブスクリプション契約で提供されています。利用料金内には、契約期間中の最新バージョン利用権およびシステムサポート費用(電話・FAX・メール・リモートサポート)が含まれています。なお、協栄産業公式サイトの案内の通り、2026年9月1日付で利用料金が改定されました。
| プラン(保有ライセンス数) | 初期費用 | 利用料金(2026年8月31日まで) | 利用料金(2026年9月1日改定後) |
|---|---|---|---|
| 1ライセンス | 要問い合わせ | 年額92,400円(月額換算7,700円・税込) | 年額122,100円(月額換算10,175円・税込) |
| 2ライセンス | 要問い合わせ | 年額158,400円(月額換算13,200円・税込) | 年額209,880円(月額換算17,490円・税込) |
| 3ライセンス | 要問い合わせ | 年額224,400円(月額換算18,700円・税込) | 年額297,660円(月額換算24,805円・税込) |
無料体験版として、利用開始月の翌月末まで(最大2ヶ月間)すべての機能を制限なく利用できるプログラムが用意されています。体験版で作成したデータはそのまま製品版へ移行可能です。なお、かつて小規模事業者向けに提供されていた「KYOEI COMPASS Light」は2025年10月14日をもってライセンス販売を終了しており、現行の新規導入は「KYOEI COMPASS 2.0」への統一が案内されています。
導入事例・実績
協栄産業の公表情報によると、KYOEI COMPASSシリーズ全体で1,500社以上の導入実績があります。公開されている具体的な企業事例は以下の通りです。
三和建装株式会社
建物のリニューアル・大規模修繕工事などを手がける三和建装株式会社では、積算・見積業務の効率化を目的として、同社製リニューアル積算システム「RSS」とともに「COMPASS」を導入しました。導入効果として、従来の手拾い作業を中心としたプロセスと比較して「ほぼ半分ぐらい時間短縮が図れた」(約50%の工数削減)と報告されています(出所:イプロスものづくり 協栄産業製品事例掲載ページ/2024年5月掲載)。※なお、同社における利用ライセンス数などの詳細規模数値は公表されていません。
外部プラットフォーム連携と公共標準フォーマット対応(One Click LCA・GACCI・RIBC・BCS)
KYOEI COMPASS 2.0は、単体での積算帳票作成にとどまらず、近年の建築業界で求められる環境負荷評価や調達DX、公共工事標準仕様との親和性を高める連携機能を標準・追加仕様として備えています。
- ライフサイクルアセスメント(LCA)算定連携(One Click LCA)
建設資材の調達から施工、解体にいたる建物のライフサイクル全体でのCO2排出量を評価する国際的ソフトウェア「One Click LCA」に向けた連携データ作成に対応しています。積算で算出した部材数量や仕様データをそのまま環境アセスメントに活用できるため、脱炭素建築・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)提案における二重入力の手間を解消します。 - 下見積徴収SaaSとの連携(GACCI連携)
専門工事業者への見積依頼や回収・比較をクラウド上で行うプラットフォーム「GACCI」との連携ファイル形式に対応しています。内訳明細データをシームレスに受け渡すことで、協力会社からの見積徴収プロセスを効率化し、下見積の突合確認作業を円滑に進めることができます。 - 公共建築・標準書式への適合(RIBC・BCSフォーマット)
公共建築工事で広く用いられる営繕積算システム「RIBC」形式や、一般社団法人日本建設業連合会が定める「BCSフォーマット」の入出力に対応しています。発注機関ごとの指定データ形式や元請・下請間のデータ交換基準に準拠した運用が可能です。
導入前に知っておきたいこと
KYOEI COMPASSの導入にあたっては、以下の仕様および契約形態上の注意点を確認しておく必要があります。
- 推奨ハードウェア要件の高さ
大量の明細データ処理や同時編集を行う仕様上、クライアントPCに求められる推奨動作環境が高めに設定されています。推奨スペックは「CPU:3.0GHz以上・8コア以上」「メモリ:16GB以上」「ハードディスク空き容量:100GB以上」となっています。一般的な事務用PC(メモリ8GB未満等)では動作が重くなる可能性があるため、導入前に社内端末のスペック確認や見直しが推奨されます。 - 契約期間は1年単位(年額一括)
料金は月額換算額が併記されていますが、契約形態は1年単位の年間契約となっています。月単位での短期利用や途中解約による返金などは原則行われないため、プロジェクト単位でのスポット利用を検討している場合は契約期間に注意が必要です。 - 導入支援作業の一部有償化
通常利用における電話・メール・リモートサポートはサブスクリプション料金に含まれていますが、専門スタッフが訪問して行うOS環境設定や初期インストール作業、積算コンサルティングなどを依頼する場合は別途有償となる点が案内されています。自社のITリソースに応じた導入計画の立案が求められます。
導入の流れ・期間
公式サイト等の情報に基づく導入手続きの基本的な流れは以下の通りです。
- 問い合わせ・デモ依頼
協栄産業の公式サイトより問い合わせを行い、製品資料の請求や持ち込みデモ(オンライン・対面)を依頼します。 - 無料体験版の利用(動作検証)
最大2ヶ月間(利用開始月の翌月末まで)利用できる無料体験版をインストールし、社内PCでの動作速度やネットワーク環境下での複数人同時編集、操作性を実機で検証します。 - 見積もり・ライセンス数の確定
同時編集を行う積算担当者の人数や拠点数に応じ、必要な保有ライセンス数を算定して見積書を取得します。 - 契約・初期設定
1年単位のサブスクリプション契約を締結します。インストーラーを用いてPCへ環境を構築し、必要に応じて過去物件データや自社単価マスタの移行を行います(訪問設定を希望する場合は有償サポートを利用)。 - 実運用開始
体験版で作成したデータはそのまま本番環境へ引き継いで実務を開始できます。操作不明点は付属のサポートセンター(電話・メール・リモート)を通じて随時解消しながら運用を定着させます。
※導入決定から実運用開始までの具体的な所要期間は、データ移行の規模や有償支援の有無によって異なるため、事前の問い合わせが推奨されます。
よくある質問(FAQ)
- スマートフォンやタブレットから利用できますか?
- KYOEI COMPASS 2.0はWindowsデスクトップアプリケーションとして設計されており、スマートフォンやタブレット(iOS/Android)向けの専用アプリは提供されていません。対応OSはMicrosoft Windows 10またはWindows 11(日本語版のみ)です。
- 複数人で同時編集する場合、専用のサーバー機を社内に設置する必要がありますか?
- 専用のサーバー機や独立したデータベース(SQL Server等)を新たに構築する必要はありません。社内の既存のローカルエリアネットワーク(LAN)環境を利用して、同一物件データを複数台のクライアントPCから同時に開いて編集作業を行えます。また、ネットワークから切り離したスタンドアロン環境での単体利用も可能です。
- 無料で機能を試すことはできますか?
- 申込み月の翌月末まで(最大2ヶ月間)利用可能な「無料体験版」が用意されています。機能制限はなく、製品版と全く同じ環境ですべての機能(同時編集含む)を試すことができます。体験版で作成した見積データは、正式契約後に製品版へそのまま移行可能です。
- 導入後のサポート体制や追加費用はどうなっていますか?
- サブスクリプション利用料金の中に、最新バージョンへの無償アップデータ提供および専任サポートセンターの利用費用(電話・FAX・メール・リモート接続サポート)が含まれており、追加の年間保守費用は発生しません。ただし、現地訪問による環境設定やインストール代行、個別コンサルティングなどは一部有償対応となっています。
- 月払いでの契約は可能ですか?
- 表記上は月額換算額が示されていますが、契約は1年単位のサブスクリプションとなっており、支払いは年額単位です。数ヶ月間だけの一時的な契約形態は確認されていないため、年間を通じた利用を前提に検討する必要があります。
- 「KYOEI COMPASS Light」と何が違いますか?
- かつて小規模向けに提供されていた「KYOEI COMPASS Light」は、2025年10月14日をもってライセンス販売が終了しました。現在は、多階層編集や同時編集、外部連携機能などを網羅した上位版の「KYOEI COMPASS 2.0」への統一・移行が進められています。