施工体制クラウドとは?
施工体制クラウドは、元請ゼネコンや専門工事業者が現場ごとに作成・管理する施工体制台帳、再下請負通知書、施工体系図などの労務安全書類(グリーンファイル)をWeb上で作成・一元管理できるSaaS型クラウドサービスです。株式会社建設システム(KENTEM)が2024年3月26日に提供を開始しました。下請企業から集まる膨大な添付書類や台帳情報をクラウド上に集約・マスター化し、AI解析を活用した登録補助やリアルタイムな進捗確認機能を通じて、現場監督とバックオフィスの分業化および労務安全管理に関わる間接業務の効率化を支援します。
主な機能
書類作成・AI自動化機能
- AI入力アシスト機能
協力会社から受領した作業員名簿や建設業許可証のPDF・画像データをAIが自動で解析し、マスターデータへ文字情報を抽出・自動入力します。作業員名、生年月日、資格名称、許可番号などの目視確認と手入力の手間を削減し、誤入力に伴う書類の再作成や差し戻しリスクを抑制します。 - 法定帳票の自動生成・出力
蓄積されたマスター情報や契約関係の階層構造に基づき、施工体制台帳、再下請負通知書、施工体系図などの帳票を出力できます。ツリー構造で管理された組織図から各社の添付書類を一括ダウンロードすることも可能で、発注者への提出や現場掲示に必要な準備工数を削減します。
マスターデータ管理・ガバナンス機能
- 協力会社・添付書類のデータベース化
一度登録した協力会社の企業基本情報、建設業許可証、作業員の保有資格証などの写しをクラウド上でマスターデータとして保持します。次回以降に別現場で同じ協力会社が入場する場合でも既存データを再利用できるため、現場着工のたびに同一書類を収集し直す二度手間を防ぎます。 - 変更履歴管理と長期データ保管
工期途中で技術者の交代や再下請負業者の追加が発生した際、更新前後のファイル履歴をシステム上で管理します。さらに、建設業法や住宅瑕疵担保履行法などで義務付けられている完工後5年間または10年間の書類保管義務に対応した安全なクラウド保管環境を提供します。
進捗可視化・外部システム連携機能
- 書類登録状況のダッシュボード可視化
現場ごとに参加する一次・二次以降の下請企業が一覧表示され、各社における必要書類の提出状況や未登録ステータスを画面上で直感的に確認できます。どの業者のどの書類が滞っているかをバックオフィス側でも即座に把握できるため、現場監督個人に依存していた督促業務を社内で分担しやすくなります。 - KENTEM-CareerLog連携によるCCUS直接照会
同社が提供する就業履歴蓄積サービス「KENTEM-CareerLog」と連携することで、施工体制クラウド上に登録した施工体制情報や作業員情報を活用し、CSVファイルの書き出しや取り込み作業を介さずに建設キャリアアップシステム(CCUS)へ直接照会・連携が行えます。
こんな企業・現場に向いている/向いていない
向いている企業・現場
中堅・中小規模で施工体制台帳作成の二度手間と現場負担を削減したい建設会社
- 複数現場で同一の協力会社を頻繁に起用しているが毎回紙で書類を回収している
施工体制クラウドでは協力会社の基本情報や添付資格証をクラウド上のマスターとして蓄積できるため、2回目以降の現場では既存データを呼び出して帳票を生成できます。現場ごとに新規作成する手間が省け、初雁興業株式会社の事例のように「提出期限の2〜3日前には台帳が完成する」運用体制の構築につながります。 - 協力会社から紙やPDFで届く書類の転記入力でミスや差し戻しが頻発している
AI入力アシスト機能により、PDFや画像形式で送られてきた作業員名簿や建設業許可証を解析して自動で文字入力できるため、転記ミスによる差し戻しを未然に防ぎ、元請側の確認工数を削減できます。 - 現場監督が書類作成に追われ時間外労働の上限規制(2024年問題)への抵触が懸念される
ダッシュボード上で書類の提出・未提出状況を全社的に把握できるため、現場監督が抱え込んでいた書類督促や編冊作業を本社の事務部門・バックオフィスへ移管し、業務の分業化を推進できます。
建設キャリアアップシステム(CCUS)連携を視野に入れつつ低コストに導入したい企業
- CCUSへの登録・照会作業でCSVの出力・加工作業が負担になっている
同社製「KENTEM-CareerLog」を併用することで、クラウド内のデータを直接CCUSへ照会・連携できるため、基幹系や外部ツールとのデータ連携に工数を割けない体制でもスムーズな運用移行が可能です。 - 大手ゼネコン向けプラットフォームの高額な現場従量コストを避けたい
年額60,000円(税抜・5ライセンス単位)という定額制で提供されているため、現場数や下請会社数に応じた過度な従量課金を抑えつつ、計画的な予算組みで労務安全管理の電子化を進められます。
向いていない企業・現場
発注元や上位元請から特定の安全書類プラットフォームの利用を指定されている会社
- 大手スーパーゼネコンの現場が主体でグリーンサイト等の利用が現場入場要件になっている
元請企業が特定プラットフォームでの一括提出を指定している現場では、自社単独で別システムを導入しても最終的な帳票提出を共通プラットフォーム上で行う必要が生じます。二重運用を避けるためにも、指定ツールの利用を最優先に検討する必要があります。
年間の稼働現場数がごく少数で固定SaaSコストを正当化しにくい小規模事業者
- 年間1〜2件程度の小規模工事のみを施工しており書類作成頻度が極めて低い
本製品は5ライセンス単位(年額60,000円税抜)かつ初期費用(30,000円税抜)およびKSデータバンク(年額10,000円税抜〜)の固定費用が発生します。年間の書類作成頻度が極めて限定的な場合、全建統一様式の無料Excelテンプレート等による運用の方がコストパフォーマンスに優れる場合があります。
類似ツールとの比較
| ツール名 | 特徴 | 料金 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| 施工体制クラウド | AI入力アシスト機能とKENTEM製品連携(CareerLog経由のCCUS直接照会)を標準備え、台帳・体系図の作成とマスター化に強み | 初期費用:30,000円 年額:60,000円 / 5ライセンス ※KSデータバンク必須(年額10,000円〜) |
地場ゼネコン、中小工務店、KENTEM製品群の導入企業、手頃な定額制で台帳作成を内製化・効率化したい企業 |
| グリーンサイト | エムシーディースリー株式会社が運営する業界標準クラウド。大手ゼネコンから数多くの協力会社まで広く普及し、業界標準ネットワークを形成 | 元請・下請・現場規模に応じた体系(要問い合わせ) | 大手ゼネコンの一次下請・専門工事業者、元請指定で統一プラットフォーム利用が求められる企業 |
| Greenfile.work | シェルフィー株式会社が提供。500項目以上の不備自動検知、上位企業による下請の代行入力機能、直感的なUIで差し戻しを削減 | 元請:要問い合わせ 一次下請以下:無料(基本機能) |
現場や下請のITリテラシーに課題を抱える元請、書類不備による手戻り・チェック工数を劇的に減らしたい企業 |
| Buildee労務安全 | 株式会社リバスタが提供。調整会議や進捗管理など現場管理全体を網羅するBuildeeシリーズの労務安全特化モジュール | 利用機能・現場規模に応じた体系(要問い合わせ) | 揚重・搬入調整や入退場管理など現場全体の工程・安全管理をワンストップで統合したい中堅〜大手ゼネコン |
労務安全書類サービスの選定においては、「取引先からの指定有無」「対象とする書類作成業務の範囲」「料金体系の柔軟性」が主な比較基準となります。
大手ゼネコンが元請となる現場が中心の場合、現場入場条件としてグリーンサイトの指定を受けるケースが多く、プラットフォームの標準普及率が決定打となります。また、下請企業のIT習熟度にばらつきがあり書類不備の自動判定や代行登録を重視するならGreenfile.work、工程調整や入退場ゲート連携など現場全体のDXまで拡張したい場合はBuildee労務安全が有力な選択肢です。
これらに対して「施工体制クラウド」は、自社が元請となる地方自治体・民間発注の現場において、紙やPDFで届く書類の転記作業に苦慮している中堅・中小ゼネコンに適合します。5ライセンス年額6万円(税抜)という明確な定額体系で導入でき、AI入力アシストや自社製品「KENTEM-CareerLog」との直接連携により、専任のシステム担当者がいない体制でも着工前後の書類作成負担を着実に軽減できます。
料金・プラン
施工体制クラウドの利用料金は、基本ライセンス費用、初期登録料、および必須オプションであるクラウド保管基盤「KSデータバンク」の合計で構成されます。すべて税抜価格です。
| 項目 | 金額(税抜) | 単位・契約条件 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 基本利用料 | 60,000円 / 年 | 5ライセンス単位 | 契約期間中にライセンスを追加する場合は、更新月までの差額を3カ月単位(端数切り上げ)で精算 |
| 初期登録料 | 30,000円 | 1クラウドIDにつき初回のみ | 導入時の環境設定・アカウント発行費用 |
| KSデータバンク(必須) | 10,000円 / 年〜 | 10GB単位(利用人数無制限) | 施工体制クラウドの利用に契約必須。容量追加は10GBあたり年額10,000円加算 |
5ライセンスを超える規模で運用する場合は、ライセンスの追加契約が必要です。契約途中での追加は更新月までの残月数に応じて3カ月単位で算出されます。詳細な見積もりや構成に関しては株式会社建設システムへの確認を推奨します。
導入事例・実績
初雁興業株式会社
- 企業規模・事業形態
土木50%・建築50%の売上構成を持つ総合建設業。土木工事の約90%が官庁工事、建築工事の約90%が民間工事を担当しています。 - 導入規模・活用実態
約100社以上の協力会社から提出される施工体制書類を「施工体制クラウド」に取り込み、元請企業としての安全書類作成・管理基盤として運用しています。 - 導入効果
一度登録した協力会社の情報をマスターとして次回以降の現場へ流用できるようになり、書類作成における転記・二度手間を解消しました。その結果、「ほとんどの現場が提出期限の2~3日前には完成し、現場への受け渡しを完了している」という明確な前倒し効果を実現しています。
建設キャリアアップシステム(CCUS)連携とKENTEM製品群との連携性
施工体制クラウドは、単体での労務安全書類作成にとどまらず、株式会社建設システムが展開する土木・建築向けICTツール群との機能連携を前提に設計されています。
国土交通省が推進する建設キャリアアップシステム(CCUS)への対応において、従来は作業員名簿や施工体制データを一度CSV形式で出力し、CCUS側の管理画面から手動で取り込むといった二重の手間が発生しがちでした。施工体制クラウドでは、同社の就業履歴蓄積サービス「KENTEM-CareerLog」と連動させることで、クラウド内に蓄積された施工体制および技能者情報を介してCCUSへ直接照会・連携することが可能です。
これにより、公共工事におけるCCUS活用推奨現場や営繕工事での評価基準に対応する際も、中間ファイルの加工に伴うデータ不整合や運用ミスを排除し、信頼性の高い施工体制データを関係各所へ円滑に提供できます。
導入前に知っておきたいこと
施工体制クラウドを検討・運用するにあたっては、以下の仕様および契約条件を確認しておく必要があります。
- ストレージ基盤「KSデータバンク」の契約が必須
施工体制クラウドを利用する際は、作成した帳票や受領した資格証などの添付ファイルを保管するため、同社のクラウド基盤「KSデータバンク(10GB年額10,000円税抜〜)」の契約が必須となります。ファイル容量が上限を超過する場合は追加ストレージ契約が必要になります。 - 契約ライセンス数の単位
基本契約は5ライセンス単位(年額60,000円税抜)となっており、1ライセンス単位での個別契約は行われていません。自社の利用予定人数(現場監督・バックオフィス担当者など)を確認した上でライセンス計画を立てる必要があります。 - 動作環境の制限
推奨動作環境は「Microsoft Windows 11(64ビット版)」およびブラウザ「Microsoft Edge 最新版」と公表されています。また、画面解像度は1920×1080ドット以上(16ビット以上カラー表示)が推奨されており、低解像度のモニターや指定外のブラウザ環境では表示が制限される場合があります。 - 市場における第三者レビューの状況
2024年3月リリースと比較的新しいサービスであるため、現時点では外部レビューサイト等において長期運用に伴うユーザーからの定量的な課題報告や不満点は確認できていません。現場の実務に即した操作性や機能充足度については、デモ画面等で事前に確認することが推奨されます。
導入の流れ・期間
労務安全書類管理SaaSの一般的な導入手順および施工体制クラウドの利用開始フローは以下の通りです。
- 問い合わせ・製品デモ
公式サイトのフォーム等から問い合わせを行い、製品説明やオンラインデモを通じてAI入力アシストや帳票出力の操作画面を確認します。 - 見積もり・契約締結
運用するユーザー数(5ライセンス単位)および想定されるファイルデータ容量に応じたKSデータバンクのプランを確定し、見積もり受領後に利用契約を締結します。 - クラウド環境発行・初期設定
発行されたクラウドIDに基づき、社内の管理者・担当者アカウントの割り当て、自社の基本情報や現場情報の初期登録を実施します。 - マスター登録・本運用開始
主要な協力会社の基本情報や添付資料をAIアシストを活用して登録し、着工現場における施工体制台帳・体系図の作成・運用を開始します。
施工体制クラウドの具体的な最短導入期間やアカウント即日発行の可否については公表されていないため、急ぎの現場着工を控過している場合は事前の問い合わせが必要です。
よくある質問(FAQ)
- スマートフォンやタブレット端末専用のアプリはありますか?
- モバイルアプリに関する公表情報は確認されていません。推奨動作環境としては「Microsoft Windows 11(64ビット版)」および「Microsoft Edge 最新版」が指定されており、PCのブラウザ環境からの利用が基本仕様となっています。
- 契約前に無料トライアルやデモ画面の確認はできますか?
- 公式サイト等で自動発行される無料トライアルの提供有無は明記されていません。導入検討時のデモ実演や機能確認については、株式会社建設システムへ直接問い合わせて確認することを推奨します。
- どのようなサポート体制が用意されていますか?
- 専任スタッフによるフリーダイヤルおよびナビダイヤルでの電話サポートに対応しているほか、画面を共有して操作案内を受ける「リモートサポート」が提供されています。また、PDF形式の操作マニュアルやFAQサイトも用意されています。
- 契約期間中にライセンス数を追加することは可能ですか?
- 可能です。年額契約の途中であっても、次回の更新月までの差額を3カ月単位(端数月切り上げ)で精算して追加ライセンスを契約・利用できます。
- 自社で契約している協力会社側もライセンス費用を支払う必要がありますか?
- 施工体制クラウドは導入元企業(元請や自社)がライセンスを保有して運用する形態です。協力会社の負担条件や外部アカウント付与の可否など、具体的な下請運用ルールについては見積もり時に確認することを推奨します。